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東京の山・神奈川の山・関東周辺の山を夫婦で「気ままに山歩き」登山・ハイキング・トレッキングの山行記録です。

中央線・一ノ尾根~陣馬山~和田峠中央線・一ノ尾根~陣馬山~和田峠

中央線・一ノ尾根~陣馬山(855m)~和田峠 
令和元年(2019)5月6日(月)2名

     

陣馬山山頂からの展望。中央は生藤山に連なる連行峰(1016m)

陣馬登山口~陣馬山~和田峠~陣馬高原下バス停のGPS軌跡

陣馬山山頂マップ

久しぶりに陣馬山に登って「人気の山だな」と思った。その訳は次のようなものである。・首都圏からのアクセスがいい。・電車から徒歩でもバスでも車でも行ける。・山頂が広く高原状で展望がいい。・登山コースが多く1~3時間で登れる。・高尾山に近く縦走も出来る。・白馬の像と三軒の茶屋がある。等

陣馬山へは何度か行ったが最後に登ったのが15年ほど前である。それなのでコースの記憶もあまり定かでない。陣馬山はどこから登っても似たようなものだが、今回は一番歩かれている一ノ尾根コースを登ることにした。JR藤野駅前の広場に降りると「和田」行バス乗場には既に15人ほどが並んでいた。バスの便数が少なく陣馬登山口バス停までは徒歩30分ほどなので歩く人も多い。そのため駅前から徒歩コースの道標も付けられている。またタクシーも常駐しているので3~4人のグループなら利用するのもよい。タクシー料金は1200円程度である。今日は振替休日なので9時台のバス便が2本あり9時45分発を利用した。

陣馬山は東京都八王子市と神奈川県相模原市との都県境にある標高855mの山で山頂に三等三角点がある。国土地理院の地形図では陣場山と陣馬山が併記されている。陣場山の山名は戦国時代に武田氏が北条氏の滝山城(八王子市)を攻めた時に陣を張ったことから陣張山といわれ、後に陣場山と呼ばれるようになった。また天正年間には武田氏の狼煙台があったとされる。1960年代後半に京王電鉄が陣場山を観光地として売り出すために山頂に白馬の像を建てた。これ以降は次第に陣馬山と表現されることが多くなる。頂上付近は元々はカヤ刈場であったことから、現在も芝などの広々とした草原となっている。このため富士山や近隣の山はもちろん、奥多摩、丹沢、南アルプスや東京・横浜の市街地などの展望が得られる。

陣馬山山頂には白馬の像があり「陣馬高原山頂標高857m」のプレートが付けられている。この白馬の像の前にあるのが「富士見茶屋」で、栃谷尾根・明王峠への入口になる。白馬の像から北に少し下ったところにあるのが「信玄茶屋」で、和田峠・陣馬高原下バス停の入口になる。白馬の像から北に少し下り西側の斜面にあるのが「清水茶屋」で、一ノ尾根の入口になる。

陣馬登山口バス停から100mほど先にある陣馬山登山口の碑

「陣馬登山口」バス停まで乗車時間5~6分ほどである。大半の人はここで降りるが和田へ向かう人もいる。バスの進行方向を100mほど歩くと右側に「陣馬山登山口」の記念碑が出てくる。この道を入って行くと直ぐに郵便局があるのでその手前を左折する。あとは道なりに舗装道を10分ほど歩く。集落が切れて舗装が無い道を右折すると道標があり一ノ尾根登山口である。

尾根道から20mほど離れたところに朴の木が咲いていた

緩やかな尾根道を登り一息入れていると尾根道から離れた高い木に白い花が咲いていた。花が上を向いているので朴の木なのだ。かなり距離があったのでズームで撮影してみた。
ホオノキ(朴の木)はモクレン科の落葉高木。木は大きくなり樹高30 m、直径1 m以上になるものもある。葉は大きく長さ20cm~40cmにもなる。葉の形は倒卵状楕円形で明るい緑で裏面は白い粉を吹く。花は大型で大人の掌ほどの白い花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かって開花する。白色または淡黄色で5~6月ごろ咲き芳香がある。「ほお」は「ほう」(包)の意味で大きな葉に食べ物を盛ったことから。朴葉焼きは朴の木の葉に刻んだ山菜と味噌をのせて炭火で焼いたもの。

コバノガマズミ(小葉ノ莢蒾)

コバノガマズミはスイカズラ科の落葉低木で樹高は4mほどになる。山地に普通に生え尾根筋や谷筋どこにでも見ることができる。花の季節や実の季節でないと見逃してしまう。4~5月頃、枝先に白色の花が多数集って散房花序をつくる。花冠は径約5mmほどで先が5裂し、その内側に雄しべ5本と雌しべを持つ。花はガマズミに比べれば小さく、直径5ミリほどで雄しべが長く飛び出す。果実は長さ6~7mmの卵円形で秋に赤く熟す。名前は「小葉のガマズミ」で小さい葉のガマズミである。葉の大きさはガマズミと変わらないが、葉の幅が細いので小さく見える。葉の先端が鋭く尖り、縁にギザギザ(鋸歯)がある。


コバノガマズミ(小葉ノ莢蒾)

薄暗い林の中に白い小さな花がたくさん集まって咲いている。紫陽花の仲間かと思ったがそうではない。まだ5月初めなのだ。これはガマズミの仲間で秋に赤い実がなる。

一ノ尾根の登り

一ノ尾根は緩やかで歩きやすい登山道だ。よく手入れもされている。5月の初めなので新緑が鮮やかだ。

一ノ尾根に咲くヤマツツジ(山躑躅)

ヤマツツジ(山躑躅)は日本固有種でツツジ科ツツジ属の半落葉低木。樹高は1~3mで低山地の疎林内、林縁、日当たりのよい尾根筋、草原などに生育する。日本の野生ツツジの代表種で、野生ツツジでは分布域がもっとも広い。花期は4-6月で枝先の1個の花芽に1~3個の花をつける。花柄は長さ3~4mmになり花冠の筒はやや太く、色は朱色が多いがまれに紅紫色や白色がある。葉には春葉と夏葉がある。春に付き秋に落ちる葉を春葉といい、夏から秋にかけて付き越冬する葉を夏葉という。春葉は大きく(長さ2~5cm)、夏葉は小さい(長さ1~2cm)。落葉するが冬の間も葉があるということで「半落葉」という分類がされる。


一ノ尾根に咲くヤマツツジ(山躑躅)

5月初旬のこの時期はヤマツツジの季節なのだ。一ノ尾根も例外ではない新緑の尾根道のあちこちにヤマツツジが咲いて色どりを添える。

一ノ尾根の休憩所(一ノ尾テラス)

一ノ尾根の中ほどぐらいに一ノ尾テラスという休憩スペースがあった。一息入れるのに丁度いい場所だ。

朽ち木に咲くジュウニヒトエ(十二単)

ジュウニヒトエ(十二単)は、草丈が10~30cmでシソ科キランソウ属の多年草。日本固有種で主な生育地は本州と四国の山地や丘陵地や林の中。4月~5月、葉の脇から穂状花序を出し白~薄紫色で花径が1~2cmの唇形小花を重ねるように咲かせる。名前の由来は花の咲く様子を宮中の女官などが着る十二単に見立てたもの。


一ノ尾根の針葉樹の尾根道

よく手入れされた針葉樹の尾根道だ。山頂にだいぶ近づいて標高700mぐらいのところだろうか。

コゴメウツギ(小米空木)

コゴメウツギ(小米空木)は、バラ科コゴメウツギ属の落葉低木。北海道から九州まで日本全国に分布し、低山地や林の縁に普通に生育する。樹高は2.5mほどでよく分枝し、葉は小さく鋸歯(ギザギザ)がある。花期は5~6月で径4~5mmの黄白色の5弁花を多数咲かせ、秋には小さな実がなる。名前の由来はウツギの花が咲く5月~6月に、小米(砕けた米)のような小さな花を付けることから。一つの花は直径5㎜ほどで小さいが、びっしりとまとまって咲くため華やかな雰囲気となる。空木と名が付くがユキノシタ科のウツギの仲間と異なりバラ科だが枝や幹に空洞がある。

陣馬山山頂直下からの展望。中央は連行峰

尾根道は針葉樹林から広葉樹林に代わり頂上直下の木段がでてきた。来た道を振り返ると素晴らしい風景が見えた。新緑の樹林と後方には標高1016mの連行峰が見える。連行峰の左側に茅丸や生藤山がある。

陣馬山山頂からの展望。扇山(左)と権現山(右)。

今日の天気予報は一日中曇りということで期待はしていなかったが、昼頃から薄日が差してきた。富士山は見えなかったが風もなく穏やかで暖かい日だった。清水茶屋の前を通って左側の茶店に入った。空いていて広々としていたからだ。後で調べたらここが信玄茶屋だった。本当は山菜の天ぷらが食べたかったのだが、時期が過ぎたのかメニューになかった。そこで陣馬そば¥600を注文する。そばの具は山菜やシイタケの含め煮だ。持参のおにぎりでそばをおつゆにして食べる。おつゆが旨かったので飲み干した。

陣馬山山頂北側に張られた鯉のぼり。

大きな木と木の間にロープを渡して鯉のぼりが付けられていた。風がなく穏やかなので泳いでいないが。

陣馬山山頂の「かながわの景勝50選」の記念碑

休憩を終えて帰りがけに陣馬山頂に寄ってみる。陣馬山の山頂周辺は広く平坦なために陣馬高原とも呼ばれている。東京都と神奈川県の都県境だがどちらかというと神奈川県寄りにコースが多い。そのためか「かながわの景勝50選」の碑があり「神奈川県立陣馬相模湖自然公園」に指定されている。また「関東の富士見百景」や「東京都立高尾陣場自然公園」、「八王子八十八景」にも選ばれている。

陣馬山山頂の白馬の像

陣馬山と言えばこの白馬の像だが、1960年代後半に造られたという。それなのでもう50年以上は経つわけだ。京王帝都電鉄(現京王電鉄)が陣場山の場を馬にかえて陣馬山とした。そしてシンボルとして白馬の立像を建てた。だから馬がここまで登ったわけではないんだよね。

陣馬山山頂の白馬の像

陣馬山山頂で白馬の像を見てから帰路につく。初めは尾根道を下って陣馬高原下バス停に向う予定だった。が、信玄茶屋を通り草原を横切り和田峠・陣馬高原下バス停に向った。どちらも所要時間はほとんど変わらないのだ。

和田峠への下り

陣馬山から和田峠へは20分ほどで下ることが出来る。急な長い階段が続く。その昔、何回か登っているはずなのだが全く記憶にない。

ツクバネウツギ(衝羽根空木)

ツクバネウツギ(衝羽根空木)はスイカズラ科ツクバネウツギ属の落葉低木。林道沿いや沢沿いなど日当たりの良い山地や丘陵地に生える。樹高は2mになり密に分枝する。4~6月に短い枝の先に二輪一組で花が咲き、花の内部には黄色い模様ができる。名前の由来は花ではなく果実にある。果実の萼片の様子がプロペラ状になり、それが羽根突きの羽根に見えることから。またユキノシタ科のウツギでないが枝の様子がウツギに似ている。小枝を多く分けるこの木で箒を作ったり、枝が硬く真っ直ぐなため木釘に使用したともいう。

和田峠の登山口と茶店

和田峠は陣馬街道の最高地点(690m)であり東京都と神奈川県の都県境にある。陣馬街道は甲州裏街道ともいわれた。現在、起点は山梨県上野原市から神奈川県を経て終点が東京都八王子市に至る全面舗装道路である。登山道では北の醍醐峠と南の陣馬山の中間地点にある。元々、和田峠は相模からの呼び名であり八王子からの呼び名は案下峠(あんげとうげ)であった。和田峠には和田林道完成記念碑、峠の茶屋(営業時間9時〜17時)、駐車場(70台・有料)、トイレがある。

陣馬山からは長い階段が続いたがあっけなく和田峠に到着した。確かに車だと和田峠に駐車して登れば30分ほどで山頂に立てるのだ。和田峠から陣馬山まで最短50分で戻れる。それなので車がある人ならこのコースは早くて楽で便利なのだ。だが我々は徒歩なのでここから車道をひたすら歩いて陣馬高原下バス停に向かう。和田峠からの陣馬街道は車がほとんど通らなかった。ヘアピンカーブの多い急な車道であるが下りなので楽だ。しかしヘルメットをかぶったサイクリングの自転車乗りが次々に登ってくる。単独や2~3人、グループなど数十人は登ってきたか。ほとんどは若い男性だが中には女性も混じっている。自転車で平均斜度10°以上の道路を登るのは大変な苦行だろう。だが登山と同じで彼らも好きで登っているのだ。和田峠から陣馬高原下バス停までの3.6kmを50分ほどで歩いた。バス停には2台のバスが停車して待機していた。先発の臨時急行バスに乗車した。バスは途中「夕焼小焼」に停車してノンストップで高尾駅に向った。

「夕焼小焼」バス停周辺は八王子市の農村体験型レクリエーション施設「夕やけ小やけふれあいの里」がある。この名称はこの近くに生家のある詩人・中村雨紅が作詞した童謡「夕焼小焼」にちなんだものであり、八王子八十八景に選ばれている。この施設には夕焼小焼館(中村雨紅展示ホール・他)、市民ギャラリー、喫茶室、宿泊施設、御食事処、夕やけ小やけ ふれあいの道(陣馬山・高尾山・八王子城跡へ至る遊歩道・登山道)、キャンプ場、ふれあい牧場、ふれあい館、八王子産野菜等の直売所(管理事務所内)がある。


童謡「夕焼け小焼け(夕焼小焼)」が出来てから今年で100年になる。作詞は中村雨紅(1897-1972)により1919年(大正8年)に、作曲は草川信により1923年に作られた(この1ヶ月後に関東大震災が起きた)。中村雨紅(本名:髙井宮吉)は恩方村(現八王子市上恩方町)出身の詩人で童謡作家である。雨紅は1916年に東京の師範学校卒業後、第二日暮里小学校(東京都荒川区)教師となり、1918年に第三日暮里小学校へ転勤した。「夕焼け小焼け」の歌詞は雨紅22歳の第三日暮里小学校の教師時代に作詞された。小学校の教職員時代、雨紅は実家(宮尾神社=住吉神社琴平神社合社:八王子市上恩方町2089)の恩方村から職場へ通っていた。当時最寄駅だった八王子駅から恩方村までは片道16kmもあり徒歩3時間~4時間ほど掛かったとみられる。雨紅は毎日実家から駅までの往復36kmを歩き学校へ通勤した。歌詞では八王子駅から恩方村までの帰路に雨紅が目にした夕焼けの情景が歌い込まれている。「夕焼け小焼け」の譜面は関東大震災でそのほとんどを焼失したが、わずかに残った十数部により「夕焼小焼」が歌い広げられていった。後に有名になったこの歌だが、驚いたことに、「この歌がいつ、どこで作詩されたのかは、雨紅自身の記憶も定かではなかったという。」(市民かわら版:中村雨紅が愛した夕焼けの里より)。だから、もし震災で譜面が消失していたら、この歌は世に出なかったかも知れない。1926年(昭和元年)神奈川県厚木実科高等女学校(現厚木東高校:当時の所在地は現在の厚木小学校)教師となり、 その後厚木に住居(現厚木市泉町)を移した。1949年(昭和24年)52歳の若さで教師を退職し詩作活動に専念する。1972年(昭和47年)神奈川県立厚木病院(現厚木市立病院)にて75歳で亡くなった。雨紅がよく訪れた厚木市七沢温泉の玉川館に「夕焼け小焼けの歌碑」がある。
JR八王子駅の発車メロディーでもこの「夕焼け小焼け」が2005年(平成17年)12月より使用されている。

陣馬登山口~陣馬山~和田峠~陣馬高原下バス停のコース断面図

コースタイム 歩行3時間 距離9.5km 累積の登り892m 下り-762m
JR中央本線藤野駅(バス)9:45発~9:52陣馬登山口バス停10:00→(舗装道を歩く)→10:13登山口(山道)→一ノ尾根→12:50陣馬山13:05→13:25和田峠→陣馬街道(東京都道521号線)→14:15陣馬高原下バス停(バス)14:25発~JR高尾駅北口。

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