駒ヶ岳山頂より明神ヶ岳(1169m、中央左)、後方は丹沢と大山
駒ヶ岳山頂散策と仙石高原散策
仙石高原のススキと駒ケ岳からの富士山を両方見てみたいと思った。実は以前、仙石高原は明神が岳登山の帰りに寄ったことがある。しかし時期が遅くススキの穂はほとんどなくなっていた。また駒ケ岳へは神山の登山の帰りに4~5回寄ったことがあるがその全てで富士山を見ることはできなかった。そこで両方の一番いい時期をと考えたのが10月下旬の土、日だった。これは天候不順で取りやめた。そしてその1週間後に絶好の行楽日和がやってきた。コースとしては駒ヶ岳ロープウェイで山頂に行き、山頂を一回りする。それから神山方面へ向かい坊ヶ沢分岐から芦ノ湖湖畔に下る。湖畔の道を歩き湖尻バス停に到着する。そして車道を仙石高原まで歩くという計画であった。下りがほとんどで緩やかな車道の登りもあるが3時間くらいで行けると考えた。
小田原駅東口の5番乗り場に行くと丁度8時10分発のバスが出発するところだった。8時20分発に乗る予定だったので1本早いバスに乘れた。バスは早雲山入口、湖尻を経由して箱根園に到着した。そして駒ヶ岳ロープウェイの切符売り場で「片道2枚」と注文する。すると窓口の若い女性が「片道は売っていません」という。話を聞くと神山へのハイキングコースは閉鎖されているため行くことはできないという。自分が行くのは大涌谷の規制区域外の芦ノ湖湖畔に下るコースだと説明する。しかしそれも閉鎖されているという。連れとも相談した結果、歩くのは止めてバスで仙石高原に行くことにした。そして新たに切符売り場の列に並び直して、窓口の別の女性に「往復2枚」と注文した。そうすると服装を見てか「ハイキングをしますか?」と聞くので「しません」と答える。多分、「ハイキングをします」と言ったら切符は売ってもらえなかっただろう。
箱根駒ヶ岳ロープウェイ山頂駅が見える
駒ヶ岳ロープウェイは1963年開通というから今年で53年目になる。駒ヶ岳ケーブルカー(2005年:平成17年に廃止された)は若いころ1度乗った記憶があるが、駒ヶ岳ロープウェイは初めてである。駒ヶ岳ロープウェイ山頂駅は標高1327mである。麓との標高差は591mあり、その距離1783mを7分で結ぶ。ゴンドラは101名乗りという大型である。前方の山頂駅が小さく見えているが、登るにつれ左手に富士山も見えてくる。山頂駅付近のくすんだ緑は周辺を覆う笹原だ。
駒ヶ岳山頂から富士山
駒ヶ岳ロープウェイ山頂駅に到着して建物の外に出ると、風は冷たくて強い。気温8℃で風は一定の方向から吹いていて途切れることはない。山頂駅脇の展望テラスから芦ノ湖を見てから、赤い鳥居の立つ箱根神社元宮へと向かう。連れは信心深い?のか、社殿でお守りを買ったり参拝をしている。そして直ぐ目の前だが駒ヶ岳山頂へと歩を進める。
箱根元宮神社
箱根神社元宮
元箱根にある箱根神社の奥宮として昭和39年(1964年)に、駒ヶ岳山頂に箱根元宮が再建された。
箱根元宮の由緒(案内板より)
駒ヶ岳は北に霊峰神山を拝し、古代祭祀=山岳信仰が行われたところです。その起源は、凡そ二千有余年の昔、人皇五代孝昭(こうしょう)天皇の御代、聖占(しょうぜん)仙人が、神山に鎮まります山神の威徳を感応し、駒ヶ岳山頂に神仙宮を開き、次いで利行丈人、玄利老人により、神山を天津神籬(あまつひもろぎ)とし、駒ヶ岳を天津磐境(あまついわさか)として祭祀したのに始まる。爾来、御神威は天下に輝き渡り、歴世の天皇の崇敬と庶民の信仰をあつめ、敬仰登拝する者跡を断たづ、人皇二十九代欽明(きんめい)天皇の御代に佛教が渡来して以来神佛習合して、修験者等が練行苦行する霊場として有名になった。
奈良時代、人皇四十六代孝謙(こうけん)天皇の御代、高僧の万巻(まんがん)上人が入峰し、霊夢をうけて箱根三所権現として奉斎。天平宝字元年(757年)に山麓の芦ノ湖畔に社殿を造営し、里宮としたのが現在の『箱根神社』である。山頂の箱根元宮は、奥宮として、昭和三十九年堤康次郎氏の寄進により建立、以来祭祀が厳修されており、四季を通じて参拝者で賑っている。
史跡 馬降石(ばこうせき)
注連縄を張ってあるのは馬降石といい、白馬に乗って神様が降臨された岩とされ、石の上の窪みは馬の蹄で、穴にたまる水は日照りにも枯れたことがないと傳えられる。また参道石段の右側には馬乗石(ばじょうせき)もあります。
駒ケ岳
標高1357m。箱根の中央火口丘の一つで、神山に次ぐ高い山である。箱根の山岳信仰では古くから神山を神と仰ぎ、駒ケ岳山頂はその祭りの庭とされてきた。山頂にはハコネコメツツジ、コイワザクラ、ハコネトリカブトなどが見られる。
駒ヶ岳山頂からの富士山
今年の富士山の初冠雪は10月26日でした。甲府地方気象台から富士山の初冠雪の便りでは、平年の(9月30日)より26日遅く、昨年(10月11日)より15日遅い観測です。また、これまでの最晩記録1956年10月26日と並びました。10月26日以降も富士山には雪が降ったようでしたが、山梨県側だけに多く降ったと見えて左右非対称です。また神山の紅葉も例年よりは鮮やかさが少ない感じです。
駒ヶ岳山頂から富士山と神山(1438m、右)
箱根山周辺では数十万年前から火山活動が始まり、最終的に神山が形成されたのが三千年ほど前だとされている。古くから箱根山では山岳信仰が盛んであった。神山は箱根山の最高峰であり神の山として崇められてきたことからこの名がついたとされている。「箱根元宮の由緒」によると駒ヶ岳からの神山信仰はおよそ二千有余年の昔から行われていたとある。だとすると神山が最後に噴火して何百年かが経過して樹木に覆われたころから神山への山岳信仰が始まったものと考えられる。
駒ヶ岳山頂の荒れた笹原
駒ヶ岳山頂の笹原は人の歩くところが溝になってそれが笹に覆われている。そのため注意して歩かないと深みにはまって転倒することになる。溝はいよいよ深くなってくるので先に進むのは止めて山頂駅に向かう。こういう登山道をオーバーユース(登山道の使い過ぎ)というのだろうが、木道を造るなどして整備できないものだろうか?
駒ヶ岳山頂から神山へのハイキングコースは通行止め
駒ヶ岳山頂駅から神山に向かうハイキングコースの入口にはロープが張られ入れないようになっていた。ロープウェイ山麓駅の切符売り場の女性が言っていたのはこのことだったのだな。
駒ヶ岳山頂から芦ノ湖と三国山(1102m)、後方は愛鷹連峰
駒ヶ岳山頂から芦ノ湖
駒ヶ岳山ロープウェイから山頂方面を見る
1時間ほど駒ヶ岳山頂を散策した後、風が強く寒いので麓に下って休むことにした。下りのロープウェイは比較的すいていて周辺の風景も楽しめた。
芦ノ湖湖畔にて
芦ノ湖周辺には特にベンチなどは設置されていなかったが、湖畔前の草原でおにぎりとコーヒーのランチタイムとした。船着き場からは遊覧船が出入りし、スワンボートではせわしなくペダルを漕ぐ姿がみられた。湖面は穏やかで時折岸辺に波が打ち寄せ、日の光を受けて波が輝いていた。
仙石高原からの金時山(1213m、中央右)
というわけで思いもよらず山歩きは出来ず駒ケ岳と仙石原の散策となった。やや場違いなザックを担いで箱根園バス停へ向かう。箱根園から仙石高原行は1時間に1本の新宿高速バスターミナル行きである。近くにいた案内係の人に聞いたら席が空いていれば予約なしでも乗れるという。バスは定刻にやってきて湖尻を経て仙石高原で降りる。仙石高原の遊歩道はバス停から50mほど先の右側にあり既に人で混雑していた。
混雑する仙石高原の遊歩道
遊歩道といっても途中からは舗装されていない石がゴロゴロした歩きにくい道だ。ススキの原が両側にあり人を避けながら進む。700mほど進むと行き止まりとなる。最初と終点まで両側の風景はほとんど変わらないのだが、人は行けるところまで行ってみたいものと見える。子連れや若者など多くの人が歩きにくい道を歩いていた。
仙石高原のススキ
今は11月初旬、仙石原のススキの時期としては盛りを過ぎて遅いのだと思う。ススキの穂に新鮮味がないしフサフサ感が足りない。時期としては10月初旬から中旬頃が一番の見ごろだと思う。また山ならば鉄砲木ノ頭のススキも見応えがあると感じた。しかし山へ行けない人ならばここでも充分にススキを楽しめる。
仙石高原のススキ
時期を過ぎていたためか感動を覚える景色ではなかったがススキが楽しめた。また仙石高原のススキをもう一度見たいと思っていたのでそれなりに満足もした。しかし、歩く位置が低いためか想像していたイメージとだいぶ違っていた。もっともっと一面に広がるススキの原を想像していた。そのためか、帰りのバスの高みから見たススキの原の方が一面の広がりを感じた。
仙石高原遊歩道の終点
コースタイム
小田原駅東口(バス)8:10~9:25箱根園(ロープウェイ、往復\1300)9:50~10:00駒ヶ岳山頂(周辺散策)~11:00(ロープウェイ)~11:10箱根園(休憩)~12:45(バス)~13:10仙石高原(散策)~(バス)14:06~箱根湯本(箱根登山電車)~小田原駅