「高尾山」の扁額(へんがく)が掛かる薬王院の山門
ケーブルカー高尾山駅~薬王院~高尾山~稲荷山コースのGPS軌跡
梅雨の晴れ間の一日、近場の高尾山に行ってきました。高尾山は年間の登山者(来場者)数が300万人ほどでこれは、日本一であるのはもとより世界一の数字です。このため土・日・祭日は混むので平日にしました。ちなみに富士山の登山者数は年間35万人程度、日本で二番目は奈良・大阪にある金剛山で80万~100万人程度のようです。高尾山はフランスのガイドブック・ミシュランガイドのグリーン・ミシュランに三ツ星で掲載されています。山としては高尾山のほか富士山・高野山・屋久島が三つ星です。関東地方では小さいころ一度は遠足で行った山ですが、知名度としてはどうなんでしょうか?。日本で一番有名な山は富士山。これは誰も異論がありません。それでは2番目に有名な山は何処なんでしょうか?どうやら高尾山ではないようです。関西では高尾山はそれほど有名ではありません。知名度としては関西の生駒山か六甲山と同程度でしょう。他に有名な山は阿蘇山、大山(だいせん)、比叡山、高野山(こうやさん)、立山、御嶽山(おんたけさん)、浅間山、箱根山、磐梯山、蔵王山、八甲田山、大雪山などでしょうか。多分これの内のどれかでしょう。
高尾山ケーブルカー清滝駅(山麓側駅)
京王線の終点、高尾山口駅で降りて右に向かう。2~3分歩くと高尾山ケーブルカー清滝駅の通りにでる。今日は低山でもあり暑いのでケーブルカーを利用することにする。高尾山へ登るときは大抵の場合、稲荷山コースか6号路で登る。しかも高尾山は通過点でありその先に向かう。そのためケーブルカーを使った記憶がない。券売機でパスモを使って切符を買う。空いてる席もあったが相席なので見晴らしの良い車両の先頭に立つ。
高尾山ケーブルカー中間点、前方に日本一の急勾配が見える
高尾山ケーブルカーは高尾山薬王院の貫首の発案によるものとされています。今から100年近く前のことですね。当時薬王院の信徒は30万人とされていました。参拝者は高尾駅(当時の浅川駅。1961年、昭和36年に高尾駅に改称)から山麓まで2キロ強を30分ほどかけて歩き、更に険しい山道を1時間から1時間半かけて登ったのです。ケーブルカーの開業までには様々な問題がありかなりの時間を要しました。そして苦難の末1925年(大正14年)に工事に着手し、1927年(昭和2年)に開業されました。ちょうど今年で開業90年目になるわけですね。また京王線高尾山口駅は1967年(昭和42年)に開業され、清滝駅まで徒歩3分ほどで行けるようになりました。高尾山ケーブルカーの距離は1020m、高低差は271m、所要時間は6分です。山頂側の高尾山駅手前には、31度18分というケーブルカーでは日本一の急勾配個所があります。果たして急勾配個所に差し掛かると明らかに車体が傾き、手すりにつかまり足を踏ん張る様になりました。やっぱりこれは凄い傾斜だ。これは座席に座っていては体感できない。
ケーブルカー高尾山駅(山頂側駅)
高尾山ケーブルカーの清滝駅(麓側)の標高は201m。高尾山駅(山側)の標高は472mです。高尾山駅からは薬王院を経て標高差127mの登りで高尾山に登れます。標高520mの薬王院までは30分、薬王院から高尾山まで20分です。
なんとなくタコの口に見える蛸杉
たこ杉(蛸杉)東京都八王子市指定天然記念物
高さ37m、目通り幹囲約6m、樹齢およそ450年の大杉で高尾山内にある都指定の飯盛杉に次ぐ大木である。「蛸杉」とは、「昔参道開さくの際、盤根がわだかまって工事の邪魔になるところから伐採しようとしたら一夜にして根が後方に曲折した」との伝説とその根が「たこの足」に似ているところから呼ばれるようになったものである。(現地案内板より)
高尾山薬王院の入口、浄心門
高尾山薬王院は正式には高尾山薬王院有喜寺といい、真言宗智山派の関東三大本山のひとつです。即ち真言宗智山派の大本山として「成田山新勝寺」「川崎大師平間寺」「高尾山薬王院」が三大本山として知られています。また薬王院と参道のスギ並木は八王子八十八景に選ばれています。薬王院は西暦744年(天平16年)に聖武天皇の命により東国鎮護の祈願寺として、行基により開山されたと伝えられています。その際、本尊として薬師如来が安置されたことから薬王院と称しました。古くから高尾山は修験道の山として山伏が修行をしていました。高尾山には琵琶滝と蛇滝という二つの滝があります。ここは滝修業の道場として一般の方にも門戸が開かれています。
左右前後に四天王(仁王)が構える薬王院の山門
高尾山薬王院の山門は総檜造りで、この中には四天王が鎮座しています。四天王とは仏教における持国天、増長天、広目天、多聞天のことを言います。それぞれ東、南、西、北の方位を守護しているとされます。また四天王は聖徳太子が戦勝祈願をするなど、古来より広く信仰されてきたとされています。四天王はふつうの山門では、ほとんどの場合正面の二天王です。この高尾山薬王院のように正面と裏側に四天王が配置されているのは日本では極めて珍しいそうです。
薬王院山門の四天王像、増長天(ぞうちょうてん)
薬王院山門の四天王像、持国天(じこくてん)
薬王院の天狗。左が小天狗、右が大天狗。
天狗は飯縄大権現の随身として、除災開運、災厄消除、招福万来など、衆生救済の利益を施す力を持っているそうです。古来より天狗は神通力があるとされ、各地に多くの天狗伝説や天狗信仰があり、神格化されています。高尾山は飯縄信仰と共に天狗信仰の霊山としても知られています。
薬王院本堂
薬王院の中心となる本堂です。薬師如来と飯縄権現を祀っています。ここは1901年(明治34年)に建立された入母屋造です。彩色はされていませんが彫刻が施されています。
薬王院本堂
薬王院本社。これは不思議!寺の中にある神社。
薬王院の中心となる本社で、飯縄権現(山岳信仰が発祥と考えられる神仏習合の神)を祀る社殿(神社)です。江戸時代後期の代表的な神社建築で1952年(昭和27年)に東京都指定有形文化財に指定されました。社殿全体に華麗で極彩色の装飾がなされています。社殿前方には鳥居があり、神社であることが分かります。寺院の中にある神社という形は神仏分離以前の神社の姿の一つの典型例といえるでしょう。本尊の飯縄大権現立像は異形の仏としても有名です。
靄っていて遠くが見えない。高尾山からの展望
高尾山は東京近郊の行楽地として有名ですが元来は修験道の霊場であり、真言宗智山派大本山高尾山薬王院有喜寺の寺域となっています。高尾山という名前から京都高雄山神護寺に見立てられたこともあり、天然の森林が守られてきました。中世には八王子城主北条氏康・氏照親子がこの山の植物等を保護していました。江戸時代には幕府直轄領となり八王子代官・大久保長安が山林保護政策をとりました。その後も帝室御料林や国有林として常に保護されてきました。明治以降、牧野富太郎をはじめ多くの研究者により高尾山が最初の発見地として新しい植物が発表されました。高尾山周辺には、非常に多くの種類の植物が自生していて、最初に発見された植物は63種類に及びます。また高尾山は大阪箕面山に至る、11都府県約90市町村にまたがる長さ1,697 kmの長距離自然歩道である東海自然歩道の東の起点でもあります。
赤い実を付けるコウゾ(楮)
コウゾはミツマタと共に古くから和紙材料として知られている。楮の皮の繊維は麻に次いで長く繊維が絡み合う性質が強く、その紙は粘りが強く揉んでも丈夫な紙となる。上の写真のコウゾの果実は集合果で甘味があって食べられる。ただ花糸部分が残っていてねば付きがあり舌触りが悪いようです。この時は食べられそうだったが何の実か分からず食べなかった。
紅葉台のオカトラノオ(丘虎の尾)
サクラソウ科オカトラノオ属の多年草。高さは、50cmから100cm位。葉は茎に互生し葉柄があり長楕円形で全縁。花期は6月から7月で、白色の小さな花を茎の先に総状につけ、下方から開花していく。花穂の先端が虎の尾のように垂れ下がる。北海道、本州、四国、九州に分布する。山野の日当たりのよい草原に自生し群生する。
稲荷山コースの下山口(登山口)
稲荷山コースを下りきったところが高尾山ケーブルカー清滝駅の目の前だった。稲荷山コースを登る場合は清滝駅の前の道を右へ数十メートル進み小川にかかる橋を渡って登って行く。このほか高尾山には1号路から6号路までの登山コース(自然研究路)がある。他には蛇滝コースやいろはの森コースもある。また北高尾~景信山~高尾山、相模湖~小仏城山~高尾山、陣馬山~小仏城山~高尾山、南高尾~大洞山~小仏城山~高尾山等さまざまなコースが楽しめる。
下山後は清滝駅近くの蕎麦処でとろろ蕎麦を頼んだ。この高尾では何時もは、せいろ蕎麦とか天ぷら蕎麦を頼むのだが初めてのとろろ蕎麦だ。普通はとろろと蕎麦つゆが別々についてくるのだが、高尾のとろろ蕎麦はとろろに既に味が付けてあった。高尾山ケーブルカー清滝駅周辺から高尾山頂にかけて蕎麦処が多くある。土産物屋を兼ねた店も多い。その歴史は明治以降、高尾山薬王院の参拝客に蕎麦を振舞ったのが始まりのようだ。高尾山の蕎麦処では普通の蕎麦もあるがとろろ蕎麦が名物になっており提供する店が多い。参考:高尾山周辺のそば処 高尾山商店会
高尾山駅~薬王院~高尾山~稲荷山コースの断面図
コースタイム 歩行2時間40分 距離6.6km 累積の登り363m 下り-609m
京王線高尾山口駅9:50→高尾山ケーブルカー清滝駅~高尾山駅10:15→高尾山薬王院→11:10高尾山11:35→紅葉台→稲荷山コース→(休憩15分)→13:55高尾山ケーブル清滝駅→(蕎麦処)→高尾山口駅
記号の説明。~:電車、バス、タクシー、ケーブル等の交通機関。→:歩行。