落差40mの滝、下棚
箒杉~西丹沢VC(ビジターセンター)~下棚~本棚~西丹沢VCのGPS軌跡
中川の箒スギ(箒杉:ホウキスギ)
「国指定天然記念物」「新日本名木100選」「かながわの名木100選」
中川の箒スギへ行くには小田急線新松田駅前のバス1番乗場「西丹沢ビジターセンター」行に乗り約1時間10分ほどの「箒杉」バス停で降ります。バスの進行方向に進み左へ登る車道を行きます。もうこの辺から前方に箒スギが見えてきます。150mほど歩くと左手上部に箒スギが出てきます。箒スギの周囲は柵で囲まれその周りを歩けるようになっています。見た目では傷んでいるところはなくまだまだ樹齢を重ねて行けそうに感じました。推定樹齢は約2,000年以上とも言われていますから、はるか弥生時代の頃から生き抜いている杉です。主幹の胸高約12m、根廻り約18m、高さ約45mの大きさで神奈川県はもとより関東地方でも有数の杉巨木です。
箒スギの名前の由来はかってこの地が宝木沢(ほうきざわ)と呼ばれていたからとか、樹形が箒に似ているからとも言われています。江戸時代以降、周囲の木が伐採されて箒沢集落の入口付近に1本だけ残された箒スギは2回の災害から住民を守ったと伝えられています。最初は明治37年(1904)、付近が大火に見舞われ箒スギが火の手を阻んだので集落の全焼を免れています。2回目は昭和47年(1972)丹沢集中豪雨の時、箒スギの上部で土砂崩れが発生し箒スギを直撃しました。土砂の流れは箒スギより二手に分流した形になりました。その結果この土砂崩れで民家数軒が被害を受けたものの、この箒スギがなければ更に被害が大きくなっただろうというものでした。このため地元の住民はこの木への崇敬の念を深くし、周囲を定期的に清掃して感謝の念を表しています。また箒スギの隣には集落の守り神として「熊野神社」の祠が祀られています。
高さ45mの箒杉全景
下から見上げる箒杉の巨木
間近に見る箒杉は生き生きとしています
箒スギの周囲をぐるっと回り箒スギを祭る熊野神社前の階段を降ります。車道を更に進むと箒杉茶屋の前を通りやがて元のバス通りと合流します。箒杉茶屋の前ではおばあさんが休憩していました。もしかするとここのおかみさんなのかな?暖簾が掛かっていなかったのでまだ開店前のようです。食べログで見たら10:00~17:00となっていたので矢張り開店前でした。箒杉バス停から西丹沢ビジターセンターまで約2km、30分程の歩きです。箒杉バス停が標高445m、西丹沢ビジターセンターは標高538m、約93mの緩い登りの車道歩きです。
箒スギの案内板 国指定天然記念物 箒スギ 昭和九年三月二十六日指定
この地域は昔、禁令により杉・檜・欅・樅・樛・榧の六種はみだりに伐ることが禁じられ宝木沢といわれていた、兄弟杉として同じ位の杉一株や、小さいものが一株あったが、明治41年秋、ともに伐採された。この箒スギの名の由来はこの地域の宝木沢という集落名から取ったとも、樹形が箒に似ているところから取ったとも言われている。昭和47年に、この地方に甚大な被害をもたらした丹沢集中豪雨の際には、土砂崩れをくいとめ、箒沢の集落を崩壊から救った。この箒スギは、県下の巨木として有数のものである、胸高周囲12m、高さ45mの大きさで、推定樹齢も県下最高齢の約2000年とされている。昭和九年三月二十六日、国の天然記念物に指定された、樹下の小祠は、大室社、熊野社の合祀、地区の守護神であり、この杉も昔は社木であった。 平成4年9月 神奈川県教育委員会 山北町教育委員会。
中川川(西沢の下流)の釣り風景
県立西丹沢ビジターセンター(旧西丹沢自然教室:平成29年4月1日より名称変更)
西丹沢ビジターセンターは檜洞丸、畦ヶ丸など西丹沢の山々につながり登山者の拠点となる施設です。 季節の花々の開花状況や四季折々の自然情報、登山情報の紹介をしています。
(西丹沢ビジターセンターHPより)。
西丹沢ビジターセンターに到着してトイレを借りてからベンチで少し休憩します。ビジターセンター脇の沢に吊橋(西丹沢公園橋)が掛かっています。この辺りは西沢出合と言い西沢と中川川が合流している場所です。この吊橋を渡り林の中を5分ほど歩きます。堰堤の段差の大きな階段の上り下りがあります。開けた西沢の河原を横断します。ここからは下棚、本棚の滝のある場所まで11個の木橋ともう1か所の堰堤と小さな渡渉が幾つかあります。要所要所に道標があるので見落とさない限り迷う心配はありません。透き通る清冽な沢の流れを楽しみながらの西沢の遡行です。1ヶ月以上も山を遠ざかっていたので思った以上に汗をかきます。またバランス感覚も落ちているようなので頻繁に出てくる木橋は注意して歩きました。
西沢に掛かる木橋
1時間20分ほどの沢の遡行でようやく目指す下棚に到着しました。
下棚(シモンダナ)の全景(1枚で収まらず合成写真)
下棚は西沢上流の下棚沢にかかる優美で女性的な滝です。滑(なめ)滝のように岩壁を滑り落ちる滝で落差は約40m。棚とはこの地域で滝のことを指します。丹沢山地の主稜線部にあたる塔ノ岳~丹沢山~蛭ヶ岳を中心として西側を西丹沢といいます。西丹沢地域の滝は棚(たな)と呼ばれるものが多く、滝と呼ばれるものは少ないのです。例えば西丹沢の滝では、大棚(大棚ノ頭)、夕滝・不老ノ滝・ボウズクリノ滝(不老山)、白石ノ滝(加入道山)、本棚・下棚・涸棚・雨棚・地獄棚・モロクボ沢大滝(畦ヶ丸)、黒棚・赤棚(大杉山)、遺言棚(同角ノ頭)などがあります。
下棚の上部を見る
本棚(ホンダナ)の全景(1枚で収まらず合成写真)
本棚は丹沢三滝(本棚・遺言棚・早戸大滝)の一つで西沢上流の本棚沢にかかる落差約60mの豪快な滝です。丹沢山地の中でも流量・落差とも最大級の滝です。前回ここを訪れたのは7年前です。しかしその時とでは滝の周辺は大きく変わったように感じます。以前は割と簡単に滝壺付近まで行かれたのだが、台風や大雨で岩石や流れが変わり簡単には滝壺付近には行けなくなりました。それなので滝の見える場所で昼の休憩にしました。本棚の向かいにか細い滝があります。この滝は落差120mの涸棚(からだな)といい、雨量の少ない時はほとんど涸れた状態になります。
箒杉~西丹沢VC(ビジターセンター)~下棚~本棚~西丹沢VCのコース断面図
コースタイム 歩行3時間 距離8km 累積の登り778m 下り-691m
小田急線新松田駅(バス)8:25発~9:30箒杉バス停9:35(箒杉見学10分)→10:12西丹沢ビジターセンター10:25→(畦ヶ丸方面へ西沢遡行)→11:40下棚11:45→12:10本棚13:00→13:55西丹沢ビジターセンター→(バス)14:00発~新松田駅。