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東京の山・神奈川の山・関東周辺の山を夫婦で「気ままに山歩き」登山・ハイキング・トレッキングの山行記録です。

丹沢・丹沢湖の湖岸めぐり丹沢・丹沢湖の湖岸めぐり

玄倉~丹沢湖北岸~丹沢湖バス停
平成29年(2017)11月26日(日)単独

     

玄倉の湖岸風景。中央左は太郎小屋山(843m)

玄倉バス停~玄倉川橋~丹沢湖北岸道路~大仏大橋~丹沢湖バス停のGPS軌跡

快晴の今日、丹沢湖畔にやってきた。紅葉を見に来たわけでもなく、ハーフマラソンを見にやってきたわけでもない。最近、友人がこの地で行方不明2021年2月25日に小割沢左俣にて沢登りの登山者により発見されました。)になり、彼が登ったのではないかと思われるバリエーションルートの取付き(登山口)を見に来た。私は病気の後遺症があり今は険しい山に登ることが出来ない。そこでせめて登り口だけでも確認したくやってきた。そして思いもかけず素晴らしい紅葉と大勢のランナーに遭遇することになった。

丹沢湖は西丹沢の酒匂川水系の河内川に造られた三保ダムの建設により出来た人造湖で1978年(昭和53年)に完成しました。ダムの工事は1970年(昭和45年)から始まり8年の歳月と823億円の事業費をかけて完成しました。今から40年近く前のことですね。そして丹沢水系の豊かな水を集めた神奈川県民の水がめとして重要な機能を果たしています。丹沢湖には玄倉川(くろくらがわ)、中川川(なかがわがわ)、世附川(よづくがわ)の3つの支流からの水が流れ込んでいます。丹沢湖には玄倉川橋、大仏大橋、永歳橋、世附大橋など大小57の橋が架かっています。丹沢湖周辺は丹沢大山国定公園に指定されており人造湖ですが周囲の自然とよく調和しています。そのため「かながわの景勝50選」や「ダム湖百選」に選ばれています。

丹沢湖北岸から玄倉川橋を見る

酒匂川水系に属する玄倉川は、丹沢山地最高峰蛭ヶ岳、檜洞丸、塔ノ岳など急峻な山を水源としています。丹沢山地は相模湾からの湿った暖かい空気が標高の高い山稜に当たることから、冬季を除いて降水量の多い山地であります。地理的には玄倉ダム付近から上流は特にゴルジュ(両側の岩壁がせばまっている谷)状の地形が連続しており、ユーシン渓谷など難しい沢登りのコースが数多くあることでも登山者に知られています。玄倉川は降雨量によっては急激に水位を増す可能性の高い渓谷です。玄倉ダムもゴルジュを堰き止める形で建設されたものです。
1999年8月。玄倉川の中州でキャンプをしていた横浜市内の会社に勤める男性社員らと彼らの家族、さらに社員の関係者が、翌日の熱帯低気圧の大雨による増水によって流され計13名が死亡しました。

玄倉(くろくら)は山北町北東部に位置しています。平地は少なく大部分を丹沢山地の山間部が占めています。人家は南西部の玄倉バス停周辺に集中しており、山間部では渓谷沿いと稜線上に山小屋が点在するのみです。町の中央部を玄倉川が流れ、川沿いには玄倉林道が伸びています。玄倉川は玄倉バス停付近で丹沢湖に流入し河内川(こうちがわ)、酒匂川(さかわがわ)と名前を変えながら相模湾に流れ込みます。

ユーシン渓谷は玄倉川にある渓谷です。丹沢大山国定公園に属し丹沢の秘境とも呼ばれています。ユーシンはユーシンロッジ(現在休業中だが避難部屋あり)付近の地名でもあります。1947年にユーシン渓谷沿いに全長約9kmの玄倉林道が開通しユーシンへのアクセスが容易となりました。玄倉林道の入口にはゲートが設置してあり車両(自転車含む)は通行できず、通行できるのはハイカーのみです。また電灯がないと暗くて通れない青崩隧道(あおざれずいどう)があるので通行時にはヘッドライトが必要です。林道右側の山側斜面から時折落石があり、熊が出没する場合があります。通行する場合は落石に注意し、大声を出さず静かに通過します。鈴を鳴らすなど熊対策をしたほうが良いでしょう。ユーシンの名については諸説あります。大正時代の「谷深くして、水勢勇まし」という意味の「湧津」、や「涌深」などが由来とされています。

今日沢橋までに大ノ山への取り付き点があります。これはその内の一つ

今日沢橋(こんにちざわはし)を走るランナー

丹沢湖北部には西丹沢の盟主と呼ばれる檜洞丸(ひのきぼらまる、1,601m)があります。檜洞丸からの石棚山稜は南西側の石棚山方面へ伸びる尾根です。尾根は石棚山より進路を西側に変え、中川の箒杉で知られる山北町中川箒沢へ下ります。また石棚山からの尾根は南西方向へも伸びて大杉山、戸沢ノ頭、大ノ山を経て丹沢湖北岸に下ります。大杉山を中心にした山稜を南北に貫くルートは、地図読みが難しくヤセ尾根など危険箇所がいくつもあります。道迷い遭難、行方不明例、滑落死亡事故等が起きています。また大杉山から馬草山経由中川温泉への下りルートは、以前17名道迷い事故があったためか、この山域では最も整備の行き届いたルートになっているようです。遠くから見る戸沢ノ頭、大杉山は一見穏やかな山稜に見えます。しかし西丹沢登山詳細図には、大ノ山~戸沢ノ頭~大杉山はハードなルート、大杉山~橅ノ平~石棚山は峻険な登降が続く難路とされ要求される体力度も高いようです。

バリエーションルートを登る場合の注意点
丹沢湖北部の戸沢ノ頭や大杉山はいわゆるバリエーションルート(バリルート、マイナールート)です。昭文社の山と高原地図には山名の記載はありますがルートは載っていません。このようなルートは標識がなく踏み跡も薄く、藪や迷い易い所や危険個所がある場合が多いです。従って相応の技術と周到な準備が必要です。
1、単独行は避ける。初心者の場合は熟達者に同行する。
2、登山計画書(登山カード、登山届)を出す。
  登山口またはインターネット経由で所轄の警察署に提出する。
3、家族に具体的な行先・コースを告げる。登山計画書のコピーを自宅に置く。
4、通常携行品のほかコンパス(磁石)、地形図、GPSは必ず携帯する。
5、万一の場合に備えて、ツエルト(簡易テント)、ザイル(ロープ)、その他を携行する。

丹沢湖北部のバリエーションルート

丹沢湖北部のバリエーションルート(西丹沢登山詳細図より。R=ルート)    

44,大杉山北山稜R
石棚西尾根1210AL(標高)~穴ノ平沢ノ頭~弥七沢ノ頭~大杉山=4,230m。登高差950m。登180分。降165分。道標なし:C級+。体力度3。急峻な登り下りが続く難路。上級者向き。箒沢乗越は滑落要注意。
45,大杉山南山稜R
玄倉バス停~今日沢橋~遠見山~大杉山=4,440m。登高差605m。登140分。降110分。道標なし:C級。体力度2。各ルートへ繋げる為のハードなルート。大杉山山頂部は広く平坦で迷い易い。上級者向き。
46,大杉山西尾根R
中川温泉入口バス停~馬草山~大杉山=2,190m。登高差510m。登150分。降100分。道標なし:C級。体力度2。取付き部分は旅館浴室裏を通る径を必ず回避する。中間部で複雑な地形が続きルートが不明瞭となる。上級者向き。
47,遠見山西尾根R
中川橋バス停~遠見山=1,790m。登高差550m。登110分。降70分。道標なし:C級。体力度2。階段から取付いた先は藪が濃く不明瞭。尾根に入ると急傾斜が続く。上級者向き。

今日沢橋にある大ノ山への取り付き点を道路側から見る

玄倉中川林道の丹沢湖北岸駐車場付近からは戸沢ノ頭への取付き点があります。大ノ山へはこの今日沢橋取り付き点の他に玄倉川橋寄りに2か所有るようです。いずれも踏み跡程度のバリエーションルートで磁石(コンパス)やGPS,ロープやツエルトなどルートファインディングやビバーク用具が必須のルートです。西丹沢登山詳細図によればこのルートは「道標なし 熟達者向」となっています。


上の写真の大ノ山への取り付き点。踏み跡やトラロープが見える

大ノ山への取り付き点を真正面から見た写真です。きっと普通の登山者なら誰でも「こんなところを登るの?」と引いてしまうでしょう。右側に細いトラロープが降りています。沢沿いを少し奥に進んでみますが、ここの他には登るところは見当たりませんでした。

大ノ山への取り付き点の上部

大ノ山への取り付き点の上部を見た写真です。勾配は60度くらいでしょうか。トラロープや木の根、木の幹を頼りに登るようです。

丹沢湖北岸中央部にある駐車場。今日はランナーの給水場

玄倉川橋と大仏大橋間の丹沢湖北岸の玄倉中川林道には両端にゲートがあり、閉鎖される場合があります。玄倉中川林道中央部と大仏大橋際に駐車場があります。中央部の駐車場は10台程度、大仏大橋際の駐車場は20台以上は停められそうです。今日、中央部の駐車場はマラソン関係車両だけで一般車両は停まっていないようでした。

丹沢湖ハーフマラソン大会は11月最終日曜日に行われます。紅葉に彩られた丹沢湖を約4,000人のランナーがかけぬけます。丹沢湖の完成を記念して1979年(昭和54年)に始められたこの大会も今年で39回目の開催となります。第22回よりハーフコースが公認となり、第37回からは公認大会となりました。5km、10km、ハーフコースがあります。神奈川県内はもとより、全国各地から多くのランナーが集まります。


千代の沢展望台の説明文

千代の沢展望台入口は大仏大橋そばの駐車場内にあります。この案内板脇の石段を登って行きます。入口から高さは30~40m程度10分ほど登ります。登りきると第一展望台があり、更に15mほど上に第二展望台があります。第二展望台は富士山が良く見えますが、木の枝が少し邪魔するようです。

千代の沢、第一展望台

千代の沢第一展望台は山の斜面に造られた細長い展望台です。長さは20mほどあるでしょうか。富士山と丹沢湖と大仏大橋が良く見えます。

千代の沢、第一展望台より富士山

千代の沢第一展望台からはかなり素晴らしい富士山が見えます。登ったのが午後2時近くでもあったので逆光でした。午前中に登れば白銀の富士山が見えます。富士山の手前の山は山中湖付近の大洞山です。


千代の沢、第一展望台より大仏大橋

今日の丹沢湖の色はコバルトグリーン色です。コバルトブルーは濃い青ですがコバルトグリーンはそれに白を混ぜたような色です。ブルーの大仏大橋もシンプルでなかなかいいです。正面に見える山は世附の山々、ミツバ岳や権現山などでしょうか。

大仏大橋を渡る

大仏大橋を渡ります。今日は風が強く帽子を飛ばされそうだったので、手に持って渡りました。渡って直ぐ左手の三保小学校・中学校は丹沢湖ハーフマラソンのゴール地点と見えて多くのランナーが終結して賑やかでした。

大仏大橋を渡って千代の沢第一展望台を見る(中央の白い横線部分)

大仏大橋を渡り三保中学脇から浅瀬入口バス停、丹沢湖バス停へと向かいます。対岸に先ほど登った千代が沢第一展望台が見えてきました。第一展望台の上が第二展望台ですが樹木に少し覆われています。

牧場のある大野山(723m)

そして大野山のおおらかで丸い山容が見えてきました。大野山の頂上付近は牧草地で牛が放牧されています。そのため車道が山頂まで達していますが、それを抜きにしても、おおらかな雰囲気と展望が良く、丹沢湖や富士山が絶景です。

丹沢湖バス停付近より測水塔を見る

丹沢湖バス停付近に測水塔に降りるゲートがありました。ところで測水塔ってなんでしょうか?良くわかりませんが、きっと水位を測る場所なんでしょうね。。

丹沢湖バス停付近より遠見山(左)戸沢ノ頭(中央の突起)、大ノ山(右)

今回の目的の一つは大ノ山、戸沢ノ頭を見ることでした。丹沢湖北岸からは山の真下なので見えず諦めていました。しかしコース終着点の丹沢湖バス停からは見ることが出来ました。昭文社の山と高原地図では、戸沢ノ頭(880m)とその北側に大杉山(861.1m)が表記してあります。しかし吉備人出版の西丹沢登山詳細図には戸沢ノ頭は遠見山(880m)と記載されています。大杉山は昭文社共に同じです。

丹沢湖ビジターセンターの女性遭難のこと
玄倉バス停の近くに以前、丹沢湖ビジターセンターがありました。2015年(平成27年)3月31日をもって閉鎖されました。前回、玄倉バス停に降りたのは5年ほど前の2012年(平成24年)10月26日(金)のことでした。その日はユーシンから鍋割山へ行く予定でした。平日の西丹沢自然教室行きのバスで、玄倉バス停で降りたのは私一人だけでした。車道を玄倉林道方面へ歩いていくと道際で丹沢湖ビジターセンターの若い女性が待ち受けていて登山カードの提出を求められました。それで登山カードに記入して登山ポストに投函しました。その時は随分親切な人だなと思い、また丹沢では遭難事故が多くなっているのかな?と思ったものです。それから5年後の今日、久しぶりに玄倉バス停を降りて丹沢湖岸を歩いたわけです。
そして後日、インターネット情報を見ていて次のような記事が目に止まりました。

2013年10月18日 神奈川新聞 ビジターセンター職員、丹沢で滑落死か/神奈川
「18日午後1時ごろ、西丹沢の火打沢中流域(山北町山市場)で、前日に入山したまま行方不明になっていた県立丹沢湖ビジターセンター職員の女性(35)=秦野市千村=の遺体が発見され、19日朝に県警ヘリコプターで収容された。松田署などによると、女性は17日午前9時ごろ、台風26号による登山道への影響などを確認するため、不老山方面に単独で入山。夕方になっても戻らないため、同センターが同署に通報し、警察や消防などによる捜索が行われていた。現場は登山道から約300メートル離れた沢で、高さ約5メートルのがけ下。女性の頭部に外傷があったという。同署は何らかの原因で遭難し、がけ下に滑落したとみて詳しく調べている。」
5年前、私に登山カードの提出を求めた女性がその1年後に遭難されたようなのです。
そして、丹沢湖ビジターセンター公式ブログ。自然情報。には「2013年10月13日 日曜日 秋晴れの一日・ガイドウォーク 今朝の丹沢湖は雲ひとつない青空が広がっていました。」との記事が載っていました。

かって丹沢湖ビジターセンター前で登山カードの提出を求めたのは、きっとこの女性だったのだと思います。この女性のように登山道の情報収集のため毎日のように山に入っている人でも、何かのはずみで遭難することがあるのです。この記事を見て「人はいつどこで何が起こるかわからないんだな!」と改めて痛感した次第です。そして遅ればせながらもご冥福をお祈りしました。この女性の遭難が発見されたのは出かけた場所がはっきりしていたからです。もし行先を告げずに出かけていたら発見には至らなかったでしょう。だから登山届の提出(単独行の場合は特に)がいかに重要かがわかるのです。現地の状況、参考:「ようこそ 山へ!追悼山行 火打沢」。

コースタイム 歩行2時間30分 距離5.4km
小田急線新松田駅(バス)11:35発(10分遅延)~12:28玄倉→玄倉川橋→13:05大仏大橋際駐車場(休憩20分)→13:56千代が沢第一展望台→浅瀬入口→14:32丹沢湖バス停(バス)15:30~(バス30分遅延・途中道路渋滞あり)~17:08新松田駅。


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